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 省エネ化のための手法−負荷の低減について

 省エネルギー化のための手法には、建築による手法と、設備による手法があります。効率のよい設備機器の採用はもちろん大切ですが、これらは比較的取替えも容易で、今後も新しい技術や製品が開発されることと思われます。一方、建築的な手法に関しては、一度つくってしまうとやり直しが困難な内容が多く、全体の予算の中でのバランス判断が重要です。
 ここでは、建築による手法のなかで基本となる負荷の低減についてとりあげます。


(出典:木を活かす建築推進協議会 省エネルギー技術講習テキスト)

  外皮の断熱

 負荷の低減の手法の中でも、外皮(屋根、外壁、床、窓等の外気に接する部分)の断熱化は必須の項目になります。外皮の断熱のやり方については、敷地が確定し目標性能が決まれば、最適な仕様が簡単に決まるように思われるかもしれません。実際には、いろいろな工法・材料があり、またそれぞれに長所、短所があるため、どれを採用するかの答えをだすことは容易ではありません。断熱は、気密化・防結露とセットで考えなければなりません。更に、外壁の材料や音環境などを考慮し、最適解を導き出すことになります。

■ 断熱の基本について
 熱(エネルギー)の伝わり方には、伝導、対流、放射の3つがあり、物体間に温度差がある場合に熱が伝達されます。断熱とは熱伝達を防ぐことであり、熱伝導に対してだけでなく、対流や放射も考慮しなければなりません。
 断熱材は熱伝達を抑える抵抗の働きをするもので、伝導に対しては熱伝導率の低い素材が用いられます。気体は分子密度が低いため熱伝導率が低いのですが、対流による熱伝達に注意が必要です。動かない空気は最上の断熱材になります。
 真空中では、熱放射のみが起こり熱伝導や対流が発生しません。真空状態を保つのが難しいのですが、2枚のガラスの間に真空層を閉じ込めた真空ガラスは製品化されています。
 また材料表面の反射率を高め熱放射を妨げる遮熱塗料も断熱材の一種といえます。

■ 断熱材の種類
 建築で使われる断熱材は、大きく繊維系と発泡プラスチック系に分かれます。両方とも、熱伝導率の低い素材の中に気体を含み、対流を起こさないようにつくられています。繊維系断熱材は細い繊維の間に空気を保有し、発泡プラスチック系断熱材は、独立した小さな気泡の中にガスを閉じ込めて断熱性能を発揮しています。

素材 特長 不燃
耐火
吸音 透湿抵抗 価格
※1
 性能区分※2
鉱物繊維系 高性能グラスウール16K ガラスを高温で溶かして繊維状にしたもの。
密度が高いほど断熱性能はよい。
× 1 C
高性能グラスウール24K × 1.5 C
ロックウール 玄武岩や鉄鋼スラグを繊維状にしたもの。
650℃の熱に耐える。
× 1 C
有機繊維系 セルロースファイバー(25K) 新聞古紙を主原料に防燃・撥水性能を付加した製品。
吸放湿性、高い吸音性あり。
× 3〜4 C
ウール 吸放湿性が高い。 × 2 C
発泡
プラスチック系
ビーズ法ポリスチレンフォーム 一つ一つの粒の中に独立した気泡をもち、安価で弾力性あり。
いわゆる発砲スチロール。
× 2 C、D
押出法ポリスチレンフォーム 堅くて耐圧力性あり。
(製品:スタイロフォーム、カネライトフォーム等)
× ○  2 C、D
ポリエチレンフォーム 独立気泡と連続気泡がある。
成形・二次加工が容易、柔軟性あり。屋根材裏打ちや配管カバーなどで使われる。
連続気泡は吸音性あり。
×
2 C、D
硬質ウレタンフォーム 独立した気泡に熱伝導率の低いガスを封入。 
(製品:アキレスボード等)
× 2.5 E
現場発泡硬質ウレタン 現場で原液を吹付け、発泡硬化。吹付面に強力に接着、透湿抵抗が高い。 × 3 E
フェノールフォーム 130℃までの耐熱性あり。
(製品:ネオマフォーム、フェノバボード等)
3 F
※1 高性能グラスウール16Kの価格を1とし、同等の熱抵抗値の材料の価格(工事費も考慮)を比率であらわす。
※2 性能区分 C:熱伝導率0.040〜0.035(W/m・K)、D:0.034〜0.029、E:0.028〜0.023、F:0.022以下。熱伝導率は数値が小さいほど断熱性能はよい。A1、A2、Bは0.041以上で最近は殆ど使われない。素材が同じでも製品によって熱伝導率に違いがあるため、個別に確認する必要あり。

 熱伝導率の違いで、○×が決まるわけではありません。熱伝導率が低ければ、厚みを増すことで必要な熱抵抗値は得られます。
 繊維系断熱材は、形を自由に変えられるので、充填工法に適しています。一方、発泡プラスチック系はボード状のものが中心で、外張り工法に多く用いられます。
 建物の長寿命化の流れの中、断熱材の耐久性の検証も必要です。また、地球環境への負荷も考慮しなければなりません。発泡プラスチック系断熱材は、フロン系ガスから最近は水と炭素系を利用した発泡に切り替わってきていますが、経年劣化の検証データがまだ少なく判断が難しいところです。

■ 充填工法と外張り工法
 木造住宅での断熱工法は、基本的に充填断熱工法と外張り断熱工法に分かれます。部位で使い分ける組み合わせや、両方の足し算による付加断熱も可能です。
 コンクリート造のように蓄熱体となる躯体に断熱する場合は、充填断熱を内断熱、外張り断熱を外断熱とそれぞれよびます。ここでは、蓄熱体のない木造についてとりあげます。鉄骨造も構造体は蓄熱体ではありませんが、木造と違い鉄骨が熱橋(ヒートブリッジ)となるため、外張り断熱が基本となります。


  (出典:一般社団法人 住宅生産団体連合会 省エネ住宅をすすめよう)

充填断熱 外張り断熱
長所 ・壁の厚みを利用して断熱材を充填するので、資材・面積の無駄がなく、コストが安い。
・鉱物繊維系のほか殆どの断熱材を使用でき応用がきく。
・安価な断熱材を使用でき、工法も容易なため、ローコストにつながる。
・軸組の外側で包むので、熱橋が少ない。
・壁内結露の恐れが少ない。
・軸組内の配管、配線が容易。
・軸組をあらわしにできる(意匠上の自由度が高い)
・軸組(壁厚)の間を収納等に利用可能。
短所 ・鉱物繊維系断熱材のように透湿抵抗の小さいものを使う場合は、壁内結露の防止のため、防湿・気流止めが必要。(施工が煩雑)
・配管や配線ボックスで断熱材が欠損する。
・配管等で防湿・気流止めの補修が必要になる。
・断熱材の厚み分外壁仕上が持ち出し納まりになるため、仕上材の垂れ下がりや変形の恐れがある。
・断熱材の厚(断熱性能)に限界がある。
・窓まわりの納まりに補助部材が必要(コストアップ)
・充填工法に比べ、屋根、外壁工事の工程が増えるため、雨の多い時期は不利。

 どちらの工法が優れていると簡単には決められません。問題なく施工できれば、どちらの工法でも必要な断熱性能は確保できます。逆に、どんな高性能の断熱材を使っても、隙間ができてしまっては計算通りの断熱性能は出ません。
 建物の形状、デザイン、仕上材、そしてコストの制約の中、正しい断熱材の施工、正しい防湿工事、気密工事を行うために、どの工法・断熱材を選択するのが理にかなっているのかを考えることが重要です。

  窓の断熱

 外皮のなかでも、窓の断熱性能は重要です。いくら外壁でがんばっても窓から熱が自由に出入りしていたのでは意味がありません。
 建具の構成例 熱貫流率U※1 地域区分※2 コスト※3
@アルミ枠+単板ガラス 6.51 8 1.0
Aアルミ枠+ペアガラス(空気層12mm) 4.07 5以南 1.6
Bアルミ枠+Low-Eペアガラス(空気層12mm) 3.49 4以南 2.0
Cアルミ枠熱遮断構造+ペアガラス(空気層12mm) 3.49 4以南 2.4
Dアルミ・樹脂複合枠+Low-Eペアガラス(空気層12mm) 2.33 1、2、3 3.0
Eアルミ枠熱遮断構造+真空ペアガラス   2.0 以下 1、2、3
F樹脂(木) 枠+Low-Eトリプルガラス 1.70 1、2、3 5.0
※1 U:日本サステナブル建築協会編集「住宅の改正省エネルギー基準の建築主の判断基準と設計・施工指針の解説」による。Eについては記載なし、メーカー資料による。
※2 品確法、断熱性能基準等級4で使用可能な地域。関東は5地域(山間部を除く)。
※3 コストは@を1.0としての比率を表す。

 壁と比較してみましょう。Aのペアガラスのサッシを使っても、グラスウール16kg(熱伝導率0.045)厚100mmの1/9の熱貫流抵抗しかありません。@の単板ガラスにいたっては、1/14になります。それほど、窓は断熱に関しては弱点になります。
 かといって、窓を小さくすればよし、とはなりませんね。自然採光、風通し、眺望、、、簡単にトレードできるものではありません。

  日射遮蔽と取得について

 断熱が万全といって安心してはいけません。断熱には窓からの日射に関することが含まれていません。夏、窓から屋内に入る日射に対して無防備では、太陽光の熱により屋内が温まり高い断熱性能のおかげで気温がどんどん上昇してしまいます。
 夏は遮りたい日射ですが、冬は逆に大歓迎になります。真冬でも日射が充分にあれば、暖房機器のスイッチを入れなくてもすごせます。もちろん断熱と気密がとれていることが前提ですが。
 夏と冬で逆になるこの日射の遮蔽と取得をじょうずに使い分けることが必要になります。代表的な手法としては、深い軒・庇の出があります。これでも夏の午前の東寄り、また午後の西寄りの高度の低い日射は遮れません。すだれや外付けの縦ルーバーなどが有効になってきます。日本には昔からある知恵で新しい話ではないですね。

 冒頭でも書いたように、省エネ化の手法には、ほかにも設備による手法や太陽光発電などの創エネもあります。窓を小さく高断熱にこだわるのか、創エネ設備を備えるべきなのか、機械による自動制御をどこまで取り入れるのか、等々、まずどのような住まいにしたいか、住まい方をするのかを考えることからスタートしてみてください。

参考文献
 省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル 野池政宏 著
 スラスラわかる断熱・気密のすべて 南雄三 著
 最高の断熱・エコ住宅をつくる方法 西方里見 著

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